蛇行復元

提供: 河川生態ナレッジデータベース

河川事業のインパクト・レスポンスに関する情報


目次

概要

背景
気象や地形の特色から災害が起きやすい日本では、これまで洪水から人々の生命や財産を守ることを重視し、効率的な川の整備を進めてきた。一方で、治水重視の効率的な川の整備の結果、蛇行した川は直線化され単調な空間となった(引用:生物多様性国家戦略2010)。しかし単調な空間とすることで、生物の多様性が損なわれることが懸念されている。自然共生研究センターの実験河川で、のある蛇行河川と平坦で単調な直線河川で、魚類調査を行った結果、蛇行河川では、魚類類や湿重量(捕獲魚類の合計体重を採捕区間の面積で割った値)ともに、直線河川より多いことが確認された。


出典:中村太士編(2011)川の蛇行復元 水理・物質循環・生態系からの評価、技法堂出版

方法

 蛇行復元は、直線化された河道の再蛇行化によって、生物多様性保全や望ましい河川環境の復元を目指すことを目的として実施される。蛇行復元の方法としては、以下の3つが想定される。

①2Way方式
  • 平水時は主に旧川を流し、洪水時に旧川と本川の両方を流す。
②1Way方式
  • 本川は埋め戻し、旧川だけを流す。
③既設護岸の撤去方式



インパクト・レスポンスフローで扱う対象
ここでは、国内で事例のある、①2Way方式及び②1Way方式を整理対象とした。
蛇行復元においては、再蛇行化区間における現況の場の変化を見るという視点のほか、蛇行復元の目的でもある直線河道蛇行化することによる一定の縦断区間における相対的な環境の変化を見る必要もあることから、以降では、これら2つの視点を分けて、インパクト・レスポンスフローを整理している。

(引用文献)



蛇行復元におけるインパクト・レスポンス(再蛇行化区間)

整理対象区域


IR検討区域のイメージ

インパクト・レスポンスフローとして整理すべき区域は、蛇行復元により本川と接続される旧河道区間及び止め又は埋め戻しにより環境が変化する現在の直線河道区間が含まれる再蛇行化区間全体とし、以下の2つ区域に分割して整理した。

河道本川の接続(通水)により環境が変化する旧河道(三日月湖など)区域
直線河道 :直線河道部分の止め又は埋め戻しにより環境が変化する区域








インパクト・レスポンスの概要



IRフロー(蛇行復元:再蛇行化区間)



 河川蛇行復元は、直線化により単調化した河川を、河道平面形状を変更することにより再生するものであり、湾曲に伴い形成される構造を含む生息場全体を創出するために、大きな効果が期待できる(引用:河口ほか 2005)。
 蛇行復元の方法は、国内においては、主に直線化によって本川から切り離された旧川(三日月湖)を本川と再接続する事例が確認されている。本川との再接続にあたっては、出水時に一部の河川水を現在の直線河道にも流化させる2Way方式と、現在の直線河道を埋め戻す1Way方式の事例があるが、接続した旧川で生じる物理環境の変化については概ね同様のプロセスを経て変化の現象が生じる。すなわち、閉鎖性の止水域であった旧川が本川と接続することにより、水域連続性が生じるとともに、本川からの河川水や土砂の流入により、水質河床材料、河床形状が変化するものである。
 一方で、直線河道部分については、現象が大きく異なり、2Way方式では、上流部の上げにより静水環境創出されるのに対し、1Way方式では水域が埋め立てられ陸域化するほか、周辺の地下水位の上昇や冠水頻度の増加が見られることとなる。
これらの物理環境の変化により、水域の生物の生息環境は多様化し、魚類底生動物の生息状況が変化するとともに、周辺の湿原植生の維持・拡大が図られる。

 なお、旧河道部で生じる水温水質の変化及び河床材料(底質)の変化による魚類及び底生動物相の変化、外岸側の水深増加・流速減少、静水域の形成、水域の消失による底生動物相の変化も生じると考えられたが、モニタリング等による知見は現時点では得られなかった。

(引用文献)



物理環境のレスポンス



以下に、フロールートにおける現象を解説した。

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IRフロー:物理環境のレスポンス(蛇行復元:再蛇行化区間)



1) 旧河道

過去の治水事業等により本川から切り離された旧河道(三日月湖等)を人工的に水路開削して本川と接続するとともに、直線河道区間に上げ施設を設置する、又は埋め立てることにより、本川を流下していた河川水が旧河道に流下することとなる。
標津川では、分流堰の設置により、通水直後は3割程度が直線河道に流下したが、分流堰の玉ネットがで充填された後は、ほぼ全ての流れが旧河道に流下し、融雪出水ピーク時は、越流分を除く約6割が旧河道に流下した。(引用:鈴木ほか 2003)


(引用文献)


本川河川水を流下させることにより、旧河道部に水の流れが発生する。これにより、止水域であった旧河道が流水環境に変化する。標津川の再蛇行後の蛇行区では、流速の小さい環境はほとんど見られず、止水魚類にとっても生息に適さない環境であると推測された(引用:河口ほか 2005)。


(引用文献)


 標津川本川及び蛇行復元部(旧河道)と未接続の旧川(三日月湖)における水質調査結果によると、本川及び旧河道と比較して、三日月湖のPHがやや酸性の値を示し、CODが高い値を示した。これは、三日月湖に堆積している植物遺骸由来の有機酸や不完全分解の進行による影響であると推測された。また、三日月湖では、冬季の氷結にともなう酸素の溶入の遮断及び溶存酸素の消費により、DOが定量下限値未満の低い値を示す地点が多かった。(引用:国土交通省資料)
 旧河道においては、上流接続部から本川河川水が流下するとともに、下流接続部から旧河道内の水塊が流出することにより、本川水質に近づく方向で旧河道水質が変化するものと考えられる。


(引用文献)
  • 1)国土交通省資料


 旧河道においては、本川接続後の河川水の流下にともない流速が発生するが、湾曲部では外側方向に遠心力が働き、水面付近の流れが外側に、河床付近の流れが内側に向かう流れとなって2次流を形作る(引用:中村ほか 2011)。この2次流により、外岸側の河床材料が内岸側へ運ばれるため、旧河道の外岸側の侵食が進行する(引用:標津川技術検討委員会 2007)。
 河岸侵食が継続して生じることにより、後背地の木々が倒伏し(引用:鈴木ほか 2003)、河岸や水中のカバーが形成されるとともに、倒木周辺の流速は局所的に緩やかになる(引用:河口ほか 2005a、2005b)。
 なお、標津川では、倒流木によって造られた水中カバー出水によって消失することが確認されている。(引用:標津川技術検討委員会 2007)


(引用文献)


河道においては、本川接続後の河川水の流下にともない流速が発生するが、湾曲部では外側方向に遠心力が働き、水面付近の流れが外側に、河床付近の流れが内側に向かう流れとなって2次流を形作る(引用:中村ほか 2011)。この2次流により、外岸側の河床材料が内岸側へ運ばれるため、旧河道の外岸側の侵食が進行する(引用:標津川技術検討委員会 2007)。また、旧河道には本川からの土砂が流入してくるが、湾曲部の外岸側では流入する土砂の量に対して、流下する土砂の量が多くなり、河床の洗掘による深掘れが生じる(引用:河口ほか 2005a、2005b)。深掘れが生じた箇所では水深が増加することにより、相対的な流速は減少する。


(引用文献)


 旧河道においては、本川接続後の河川水の流下にともない本川からの土砂が流入する。一方で、流速が発生することにより、河床に掃流力が働き、堆積土砂下流に移動する。このような河床材料の掃流・更新により、本川との接続前後で旧河道河床材料(底質)に変化が生じることとなる。
 標津川で実施された河床材料の粒度分布の調査によると、未接続の旧川では、ほとんどが細分またはシルト分であったのに対し、試験蛇行区間(旧河道)では、主に分又は分であり、粗粒化する傾向が見られた。(引用:国土交通省資料)


(引用文献)
  • 1)国土交通省資料


 旧河道においては、本川接続後の河川水の流下にともない流速が発生するが、湾曲部では外側方向に遠心力が働き、水面付近の流れが外側に、河床付近の流れが内側に向かう流れとなって2次流を形作る(引用:中村ほか 2011)。この2次流により、外岸側の河床材料が内岸側へ運ばれるとともに、本川からの土砂の供給により、内岸側に土砂堆積する(引用:河口ほか 2005)。標津川では、通水から3ヵ月後には蛇行部の内岸側に砂州が形成された(引用:標津川技術検討委員会 2007)。
 外岸側の深掘れや内岸側の堆積から生じる緩い傾斜の河岸により、湾曲部内岸側には浅場や水際領域が形成されることとなる。(引用:標津川技術検討委員会 2007;中野ほか 2005)
 なお、形成された砂州上にはヤナギが繁茂してきており、植生で覆われることにより河岸の耐侵食性が高まることも確認されている(引用:渡辺ほか 2005)。


(引用文献)


2) 直線河道止め後の直線河道

 旧河道への河川水の誘導のため、直線河道上流端に上げ施設を設置することにより、直線河道への河川水の流下量は減少する。
 標津川では、分流堰の設置により、通水直後は3割程度が直線河道に流下したが、分流堰の玉ネットがで充填された後はほぼ全ての流れが旧河道に流下し、融雪出水ピーク時は、越流分を除く約6割が旧河道に流下した。(引用:鈴木ほか 2003)


(引用文献)


  • 河川水の流下停止又は減少→静水域の形成
 直線河道部への河川水の流下量が停止又は減少することにより、上げ施設の下流側では平常時の流速が減少し、静水域が形成される。一方で、出水時には上げ施設を越流した河川土砂の一部が流下する。
 標津川では、通水から3ヵ月後には、直線部に砂州が形成された。(引用:標津川技術検討委員会 2007)


(引用文献)


3) 直線河道-2(埋め戻し後の直線河道

河道への河川水の誘導のため、直線河道部を埋め戻すことにより、河川の表流水位まで引き込まれていた地下水位の流入がなくなることとなる。


直線河道の埋め戻しが行われた箇所では、周辺の陸域部の地盤高程度まで河道内へ土砂が充填されることにより、それまで河川水位の標高まで河岸部の低下していた地下水位が周辺の地下水位レベルまで上昇する。
釧路川では、旧川復元後、過年度より高い水準を維持している。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2011)


(引用文献)
1)釧路湿原自然再生協議会運営事務局(2011)第14回旧川復元小委員会 資料







生物環境のレスポンス



以下に、フロールートにおける現象を解説した。

魚類のレスポンス


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IRフロー:魚類のレスポンス(蛇行復元:再蛇行化区間)



1) 旧河道

河道本川を接続することにより、水域連続性が確保され、回遊魚の移動経路として機能するほか、本川からの遊泳魚の侵入や旧河道に生息していた止水魚の流出により、生息魚類相に変化が生じる。
 標津川では、蛇行復元試験区間をシロザケの親魚が遡上した(引用:秋田ほか 2003)ほか、サクラマスやサケ稚魚の降下ルートとして利用されていることが確認された(引用:国土交通省資料)。また、蛇行復元前後での魚の変化を確認したところ、旧川に生息していた止水性の魚類本川との連結により流出し、本川とほぼ同様の組成となった(引用:標津川技術検討委員会 2007)。


(引用文献)
  • 1)秋田ほか(2003)標津川の蛇行復元に伴うシロザケ遊泳行動の変化,日本水産学会大会講演要旨集 VOL.2003,P69
  • 2)標津川技術検討委員会(2007)標津川自然復元川づくり計画
  • 3)国土交通省資料


河道では本川からの河川水が流下することで流速が発生し、遊泳魚等の生息に適した流水環境に変化する。これにより、蛇行流路魚類相は止水性から流水性へと変化する(引用:河口ほか 2005b)。
 標津川では、蛇行部の流速が比較的早く、蛇行復元後3年間で、止水性魚がほぼ消失し、流水性魚に置き換わるといった変化が認められた(引用:後藤ほか 2005;河口ほか 2005a;標津川技術検討委員会 2007)。釧路川においても、未接続の旧川に生息していた止水魚類のヤチウグイギンブナドジョウおよびイトヨ太平洋型の生息はほとんど確認されなかったが(引用:国土交通省資料)、旧川復元前より生息魚が増加した(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2011)。


(引用文献)


 河岸侵食による河畔林の倒伏等により形成された河岸水際カバーや滞留域は、遊泳魚等の一時的な休息場など、魚類の生息環境の一部として利用される。
 標津川の調査では、回遊魚の遡上・降下の際に蛇行区間のカバーを定位環境として利用していることが確認された(引用:標津川技術検討委員会 2007;河口ほか 2005a、2005b;国土交通省資料)。また、倒木の投入試験においては試験後1ヵ月で多様な魚が確認された(引用:標津川技術検討委員会 2007)。


(引用文献)


  • ④外岸側の水深増加・流速減少→魚類相の変化
 蛇行部外岸側に形成された深場では、流速の緩やかな環境を呈しており、河川横断方向の流速の変化と併せて、回遊魚類の移動経路に選択性を与えることになる(引用:国土交通省資料)。
 標津川の調査では、サケ科の親魚が蛇行区間を移動する際に、流速の遅い箇所を定位環境として利用していることが確認された。また、サケの稚魚やサクラマスの幼魚(スモルト)は、降下の際は流心部を利用し、留まる際には流速の遅い場所で定位していることが確認された。(引用:国土交通省資料)


(引用文献)
  • 1)国土交通省資料


 蛇行部内岸側に形成された浅場や河岸の緩勾配化により、河川横断方向に流速の変化が生じ、回遊魚類の移動経路に選択性を与えることになる(引用:国土交通省資料)。
 サクラマスの幼魚(スモルト)の降下個体および非降下個体の経路の平均流速に有意な差が認められたことから、降下しようとする個体は速い流れに乗り、留まろうとする個体は遅い流速の場所で定位していたことが確認された。(引用:国土交通省資料)


(引用文献)
  • 1)国土交通省資料


  • ⑥旧川との接続に伴う物理環境の変化(全体)→魚類相の変化
 旧川との接続により、旧河道本川との水域連続性が確保され、流水環境に変化するとともに、横断方向に深場や浅場(水際域)の形成が見られるなど、魚類の多様な生息環境創出される。これにより、回遊魚の移動経路としての利用や遊泳魚の生息の増加が確認されているが、一方で、止水魚類の生息環境としては適さなくなる。
 このため、標津川では旧川との接続にあたっては、旧河道の一部を矢板によって区切ることで現在の止水環境保全している(引用:河口ほか 2005)。釧路川では、事業実施箇所の生物・生息・生育環境への影響を最小限にとどめることとし、保全すべき区域には人為的改変は加えないほか、人為的な改変を加える区域内の保全すべきは移植している。(引用:釧路開発建設部 2006)


(引用文献)


2) 直線河道止め後の直線河道

 直線河道部の上げ施設の下流側に形成される静水域止水魚類の生息場となるほか、回遊魚類の移動経路としても利用される。
 標津川の調査では、降下するサケの稚魚の大きさが蛇行区間と比較して有意に小さかったことから、成長の遅い群が流れの緩い直線河道を選択していたものと推察された。(引用:国土交通省資料)

(引用文献)
  • 1)国土交通省資料



3) 直線河道-2(埋め戻し後の直線河道

 埋め戻された直線河道では存在していた水域が消失することにより、魚類の生息環境が全て消失する。
 釧路川では、直線河道埋め戻しにあたって、仮締切部を小型魚類の移動可能な構造にするとともに、生息魚類を移動した後、上流側から実施するなどの配慮を行っている。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2010)
(引用文献)
  • 1)釧路湿原自然再生協議会運営事務局(2010)第13回旧川復元小委員会 資料


底生動物のレスポンス


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IRフロー:底生動物のレスポンス(蛇行復元:再蛇行化区間)



1) 旧河道

 河道に生息していたの流出により、底生動物相に変化が生じる。
 標津川では、蛇行復元前後での生息の変化を確認したところ、旧川に生息していた止水性の底生動物本川との連結により流出し、本川(直線部)とほぼ同様の組成となった(引用:標津川技術検討委員会 2007)。


(引用文献)


河道では本川からの河川水が流下することで流速が発生し、流水環境に変化する。これにより、蛇行流路底生動物相は止水性のものから流水性のものへと変化する。
 標津川では、再蛇行化により旧河道に生息していた止水性の底生動物のほとんどが消失し、流水性の底生動物に入れ替わった(引用:中野ほか 2005;河口ほか 2005)。また、旧川にかつて生息していた止水性の水生昆虫の定着は認められなかった(引用:国土交通省資料)。釧路川では、他の蛇行区間と同様の構成となったことが確認されたが(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2011)、個体数・湿重量は、イトミミズ科が優占した。引用:国土交通省資料)


(引用文献)


 河岸侵食による河畔林の倒伏等により形成された河岸水際カバーや滞留域は、河床の安定化をもたらし、底生動物の生息密度や数を増加させる。
 標津川で行われた倒木投入試験では、試験後に生息密度、数とも有意に高い値を示した。(引用:標津川技術検討委員会 2007)


(引用文献)


 蛇行部内岸側に形成された浅場や河岸の緩勾配化により形成された安定的な水際領域は底生動物の好適な生息環境として機能する。
 標津川で行われた調査では、浅場において底生動物の生息密度、数が高い値となったほか(引用:標津川技術検討委員会 2007)、確認されたタクサのほとんどが、水際領域で見られた。底生動物群集は多様になった(引用:中野ほか 2005;河口ほか 2005)。


(引用文献)


  • ⑤旧川との接続に伴う物理環境の変化(全体)→底生動物相の変化
 旧川との接続により、旧河道本川との水域連続性が確保され、流水環境に変化するとともに、湾曲部内岸側に浅場(水際域)の形成が見られるなど、底生動物の多様な生息環境創出される。これにより、底生動物相は止水性のものから流水性のものに変化するほか、内岸側の浅場~安定水際領域で多様な底生動物群集が生息することとなる。


植物のレスポンス


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IRフロー:植物のレスポンス(蛇行復元:再蛇行化区間)



1) 直線河道-2(埋め戻し後の直線河道

 直線河道の埋め戻しにより創出された陸域では、地下水位が高い水準で維持されており、湿生植生が回復する。
 釧路川では、施工直後は裸地であったが、4ヶ月後にはミゾソバ、イ、ヨシ等の湿性植生の回復が見られた。また、旧川復元後の調査では約30haの湿原植生が回復したことが確認された。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2011)


(引用文献)
  • 1)釧路湿原自然再生協議会運営事務局(2011)第14回旧川復元小委員会 資料


蛇行復元におけるインパクト・レスポンス(直線河道蛇行河道の比較)

整理対象区域


IR検討区域のイメージ

IRフローとして整理すべき区域は、河道平面形状を変更することによる相対的な環境の変化(効果)を把握するため、再蛇行上流又は下流の直線化されたままの河道を含む一定の区間(リーチスケール~セグメントスケール)とした。









インパクト・レスポンスの概要



IRフロー(蛇行復元:直線河道蛇行河道の比較)



 河川蛇行復元は、直線化により単調化した河川を、河道平面形状を変更することにより再生するものであり、湾曲に伴い形成される構造を含む生息場全体を創出するために、大きな効果が期待できる(引用:河口ほか 2005)。 蛇行復元の方法は、国内においては、主に直線化によって本川から切り離された旧川(三日月湖)を本川と再接続する事例が確認されている。本川との再接続にあたっては、出水時に一部の河川水を現在の直線河道にも流化させる2Way方式と、現在の直線河道を埋め戻す1Way方式の事例があるが、直線河道蛇行化による物理環境の変化については概ね同様のプロセスを経て変化の現象が生じる。
 すなわち、平面的な湾曲部が出現することで河床の洗掘堆積に変化が生じ、多様な水深・流速環境創出される。また、流路延長が延びることから河床勾配が緩やかになることに加え、川幅の縮小に伴う出水時の水位変化の拡大により、下流域への土砂流出量の減少や河川周辺での冠水頻度が増加する。 これらの物理環境の変化により、水域の生物の生息環境は多様化し、魚類底生動物の生息状況が変化するとともに、周辺の湿原植生の維持・拡大が図られる。

 なお、河床材料の変化による底生動物の生息状況の変化及び下流への土砂流出量の減少による湿地植生の変化も生じると考えられたが、モニタリング等による知見は現時点では得られなかった。

(引用文献)



物理環境のレスポンス



以下に、フロールートにおける現象を解説した。

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IRフロー:物理環境のレスポンス(直線河道蛇行河道の比較)



過去の治水事業等により直線化された河川について、周辺の旧川との接続などにより再蛇行化を行うことで湾曲部が出現する。湾曲に伴い形成される構造を含む生息場全体を創出するために、大きな効果が期待できる(引用:河口ほか 2005)。


(引用文献)


蛇行化により出現した河道の湾曲部では、遠心力の作用により2次流が生じ、河床近傍の流れは外側から内側に向かって流れることとなる。このため、河床の土砂は流れによって外側から内側に運ばれることとなり、外側の河床が洗掘を受け内側の河床が上昇する(引用:中村ほか 2011)。
 標津川では、直線河道と比較して蛇行河道のほうが水深の深い箇所が見られ、変動が大きく浅場や深場が明確な河道となり(引用:標津川技術検討委員会 2007)、再蛇行の6ヵ月後には、対照区(直線河道)の横断形状と比較すると非常に多様な形状となっていた(引用:河口ほか 2005)。また、釧路川では、旧川復元区間の河道物理環境(水深・流速)は他の蛇行区間に類似しつつあり(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2010)、直線河道区間と比較して、旧川復元区間の水深・流速は多様になった。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2010、2011;国土交通省資料)


(引用文献)


直線河道蛇行化することにより、流下距離は直線河川と比べて蛇行河川の方が長くなる。このため、任意の2地点を直線河道蛇行河道で同時に結んだ場合、水面の勾配蛇行河道の方が直線河道よりも緩やかになる。(引用:中村ほか 2011)
 しかしながら、標津川では、分流堰上げ及び蛇行部接続部上流側での土砂堆積及び下流側での河床洗掘により蛇行区間の河床勾配が大きくなる現象が見られた(引用:河口ほか 2005a,2005b)。



河床緩勾配化の模式図
出典:中村太士編(2011)川の蛇行復元 水理・物質循環生態系からの評価、技法堂出版




(引用文献)


河道湾曲部の出現により、外側側では河床の洗掘、内岸側では土砂堆積が生じるなど、河川横断方向での土砂移動の変化に伴い河床材料の平面分布も変化する。一方で、蛇行河道では、河床の緩勾配化により直線河道と比較して掃流力が減少することで区間全体の土砂収支は増加することとなり、河道内に土砂堆積しやすくなる。
 釧路川の調査では、直線河道上流部では、旧川復元区間と比較して中分の組成が高いことが確認された。(引用:国土交通省資料)

(引用文献)
  • 1)国土交通省資料


過去の治水事業で直線化された河道流下能力の確保のため、川幅が広くとられている。直線河道を旧川に接続し、蛇行化することにより、直線河道と比べて蛇行河道では基本的に川幅は小さくなる。
 釧路川では、蛇行区間と比較して、直線河道の水面幅は2倍以上大きかった。(引用:国土交通省資料)

(引用文献)
  • 1)国土交通省資料


蛇行河道では、河床の緩勾配化により直線河道と比較して掃流力が減少することで区間全体の土砂収支は増加することとなり、河道内に土砂堆積しやすくなる。標津川の蛇行復元試験地では侵食堆積の両方の現象が確認されているが、近年の観測において堆積傾向にあり、上流からの土砂を貯めている状況が確認されている(引用:標津川技術検討委員会 2007)。一方で、川幅の縮小により、出水時の河川水位の変化幅が拡大し、出水にともない浮遊砂氾濫原に流出・堆積する。
 これらのことから、蛇行部より下流への土砂の流出量は減少することとなる。標津川の調査では、蛇行上流部での浮遊砂量より蛇行区内部での浮遊砂量が減少していることが確認されている。また、これをもとに二次元氾濫解析を行ったところ、直線河道蛇行化により、下流湿原に流出する土砂量が約73%軽減されたことがわかった。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2011)


(引用文献)



河床の緩勾配化及び川幅の縮小により、出水時の河川水位の変化幅が拡大し、蛇行化前と比較して河道周辺への冠水頻度が増加する。
 釧路川では、降雨パターンが類似した年における蛇行復元前後の冠水頻度を比較すると通水後が高くなっていることが確認された。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2010、2011)


(引用文献)
  • 1)釧路湿原自然再生協議会運営事務局(2010)第13回旧川復元小委員会 資料
  • 2)釧路湿原自然再生協議会運営事務局(2011)第14回旧川復元小委員会 資料


生物環境のレスポンス



以下に、フロールートにおける現象を解説した。

魚類のレスポンス


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IRフロー:魚類のレスポンス(直線河道蛇行河道の比較)



1) 旧河道

蛇行化により直線河道と比べて河道形状及び流速が多様化することで、蛇行河道では、環境が増加し、魚類の生息環境の多様化や回遊魚類の移動経路に選択性を与えることになる。
 釧路川では、旧川復元区間の魚類相が、同様の河道形状及び流速環境を有する他の蛇行区間の魚類相と類似しつつあることが確認された。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2010)
 標津川では、直線河道区間と比較して、蛇行区間の方が、魚類の個体数、生息密度及び多様度が高いことが確認され、より大型の魚類の生息が確認された。(引用:河口ほか 2005a、2005b;後藤ほか 2005;標津川技術検討委員会 2007;国土交通省資料)
 また、回遊魚の利用についても、直線河道区間と比較して蛇行区間のほうが、サケ科魚類の親魚の遡上時及びサクラマスの幼魚(スモルト)の降下時における定位環境が増加していることが確認された。また、サケの稚魚についても流心の強弱が顕著になり、降下経路と摂餌環境の選択性が増加したことが確認された。(引用:秋田ほか 2003;国土交通省資料)


(引用文献)


底生動物のレスポンス


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IRフロー:底生動物のレスポンス(直線河道蛇行河道の比較)



蛇行化により直線河道と比べて河道形状及び流速が多様化することで、蛇行河道では、環境が増加し、底生動物の生息環境が多様化する。
 釧路川では、旧川復元区間の底生動物相が、同様の河道形状及び流速環境を有する他の蛇行区間の底生動物相と類似しつつあることが確認された。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2010)
 標津川では、水生昆虫多様度指数を算出した結果、試験蛇行区の方が本川直線区より多様度が高いことが示された。(引用:国土交通省資料)


(引用文献)
  • 1)釧路湿原自然再生協議会運営事務局(2010)第13回旧川復元小委員会 資料
  • 2)国土交通省資料

植物のレスポンス


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IRフロー:植物のレスポンス(直線河道蛇行河道の比較)



河道湾曲部の出現及び河床の緩勾配化により、付着基盤である河床材料の掃流・更新状況が変化するため、付着藻類相に変化が生じる。
標津川では、再蛇行後、蛇行流路と直線流路のクロロフィルa量は極端に少なく2mg/m2程度であった。蛇行流路と直線流路流速はともに早く、河床材料の不安定性がクロロフィルa量を低く抑えたと考えられる。(引用:河口ほか 2005)


(引用文献)
  • 1)河口洋一ほか(2005)直線化された川の再蛇行化-分野間の協働について-,日本生態学会誌,第55巻,pp.497-505


河床の緩勾配化及び川幅の縮小にともない河道周辺の氾濫原における冠水頻度が増加することで、蛇行河道周辺の氾濫原では湿地環境が維持または拡大する。
釧路川の旧川復元区間周辺の一部箇所では、ミゾソバ・ヨシ等の植生が回復してきていることが確認されている。(引用:釧路湿原自然再生協議会運営事務局 2011)


(引用文献)
1)釧路湿原自然再生協議会運営事務局(2011)第14回旧川復元小委員会 資料


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