河床整正

提供: 河川生態ナレッジデータベース

河川事業のインパクト・レスポンスに関する情報


目次

概要

背景

 河川は水だけではなく、それによって運ばれる土砂(流)の通り道である。ある場所に多くの土砂が流れ込んで、少ししか流れ出さなければ、その場所には土砂堆積し、その逆なら侵食される。気象や地形の特色から災害が起きやすい日本では、これまで洪水から人々の生命や財産を守ることを重視し、効率的な川の整備を進めてきた(引用:生物多様性国家戦略2010)。主要な大河川では、100年ないし200年に1回程度の確率で発生する降雨を長期的な治水施設の整備目標として、戦後最大規模の洪水に対して再度の災害を防止するため、河川、ダム、防施設などの整備が進められてきた(引用:財団法人日本ダム協会 1986)。これにより、土砂の流れが変化し河床低下が生じている個所が見られ、橋梁をはじめとする社会資本の維持や河川環境の変化が懸念されている。


方法

 河床整正は、河川、ダム、防施設などのインパクトにより生じる河床の変化に対し、これを整正することを目的として実施するものであり、その方法として、「河床低下部への土砂の投入」などの方法が採用されている。
 「河床低下部への土砂の投入」については、主に流水の集中により局所的に低下した河床に対し、流下能力の許容範囲内で直接土砂を投入する方法のほか、河床低下部の上流土砂を投入(置土)し出水時に発生する流水の掃流力により自然の営力をもって河床整正する方法などある。
 なお、局所的に低下した河床に対し直接土砂を投入する方法は、河床形状を人為的に整正する方法であり、整正後の河床が出水時の撹乱により経時的に平衡な状態を維持しにくいことや、土砂投入により生物生息場を一瞬に変化させることから環境に及ぼすインパクトが大きいことなどから、実施事例は少ない。
 河床低下部の上流土砂を投入(置土)する方法は、河床低下部上流のダムや取水下流など、流下能力が比較的大きくかつ流水調整が可能な地点に土砂が投入(置土)されることが多い。また、置土の高さは、出水時に冠水する河岸部において、中小出水において冠水可能な高さとした例が多い。

インパクト・レスポンスフローで扱う対象

 「河床低下部への土砂の投入」のうち、上流土砂を投入(置土)し出水時に発生する流水の掃流力により自然の営力をもって河床整正する方法の知見よりインパクト・レスポンスフローを整理している。
 なお、インパクト・レスポンスフローでは、事業実施事例の多い河川工学的に「セグメント1」「セグメント2」と言われる範囲を対象としている。



1)多自然川づくり研究会(2007)多自然川づくりポイントブック
2)生物多様性国家戦略2010
3)財団法人ダム協会(1986)日本の水とダム



河床整正におけるインパクト・レスポンスの概要




 土砂投入による河床整正は、河床高や河床材料が変化している河川において、土砂を人工的に置土することによって、洪水時の放流や、時にはフラッシュ放流をおこない、土砂を掃流させて河床や底質環境を改善し、下流河川環境改善を図るものである(引用:角 2008)。現在、多摩川永田地区や全国の複数ダムにおける下流河川で実施されている。投入される土砂は、主に分(場合によりシルト分を含む)を中心に、年間数百m3から数万m3の土砂が投入されている(引用:角 2008)。投入された土砂は、主に出水時において流水とともに下流に移動する。流下した土砂は、大局的に見れば河床低下が著しく撹乱しにくい河床に堆積し、局部的に見れば細粒材料が浮状態の間隙に充填される。堆積・充填した粒径の大きい土砂は、その場に留まるか、または後の出水において転動・滑動・跳躍しながらゆっくりと下流に移動する。また、粒径の小さい土砂間隙から除々に抜け落ち下流に跳躍・浮遊しながら移動する。これらの移動は、河床材料撹乱を活性化し、多用な河床形態を形成する(引用:作文)。この現象を時間軸をもって整理すると以下のシナリオが考えられる。
 まず土砂投入直後のレスポンスである。投入した土砂は、後に発生する出水により掃流されるまで、その多くが置土場所に留まる。水際部の材料は、平常時の流水によりわずかに洗掘を受け、主に粒径の小さいが短い距離を移動し堆積する。なお直接的な変化を受ける置土場所では、土砂が残存することにより新しい環境創出されるが、これが維持される期間は短く、陸域植生は、草本類の一部が生長するものの、後に発生する出水時の土砂掃流によりすべてが流出する(引用:角 2008)。
 次に置土後数ヶ月におけるレスポンスである。置土した土砂が動きえる出水が発生した場合、土砂は流水に接する箇所から次第に崩壊し(引用:櫻井ほか 2008)、その後流量の規模に応じ1出水または複数出水によりすべてが下流に掃流される。掃流された土砂は、粒径が小さいほど短い時間に下流に到達し河床に沈降・堆積する。到達距離は発生する流水の掃流力と重力、及び出水の発生頻度により異なる。粒径の大きいは、粒径と発生する掃流力などにより移動の形態(転動・滑動・跳躍)を変えながら河床を撹乱し、ゆっくりと下流に移動する(引用:角 2008)。これにより、土砂投入前に見られた河床の洗掘や河床を構成する材料(粒径)の多様化が期待できる(引用:山下ほか 2006)。
 植生が生長する砂州部では、ツルヨシなどの草本類が置土した土砂とともに掃流され、出水直後に自然裸地の増加が確認された例(引用:角ほか 2009)や、土砂投入後に残された細粒材料が木本類の生長を助長した例(引用:坂本ほか 2010)も報告されている。
 なお、投入したシルトなど細粒土砂は、出水時に濁りとなって河道を流下するため濁水濃度はわずかに増加する(引用:池ほか 2009)ほか、流れの緩やかなにおいて掃流状態で移動したとともにこれらが沈降するため、の深さが浅くなる(引用:菊池ほか 2007)などの現象が生じる場合がある。さらに、土砂投入の量や方法によっては河床の一部に投入した土砂が過剰に堆積し、環境変化をきたす場合も考えられる(引用:坂本ほか 2010)。河床の変化を把握するためのモニタリングの実施が望まれている(引用:池ほか 2009)。
 河床の撹乱・更新の助長によるの規模の拡大は、に見られるの表層に生長する新鮮な藻類の生息場所を拡大するほか、投入した土砂による研磨効果が働き、出水時をはじめとして定期的に剥離・更新が行われるようになる(引用:皆川ほか 2004)。一方で、投入したシルトなど細粒土砂は、出水時に濁りとなって河道を流下するため濁水濃度はわずかに増加し(引用:坂本ほか 2010)、流れの緩やかな河床では上に生長する付着藻類を覆うように堆積細粒土砂堆積する。これにより、藻類の日射障害が生じ、生長が阻害されるとした報告もある(引用:皆川ほか 2004)さらに土砂投入の量や方法によっては河床の一部に投入した土砂が過剰に堆積し、環境変化をきたす場合もある(引用:坂本ほか 2010)。
 河床の撹乱・更新の助長によるの規模の拡大と河床材料の変化は、に生息する底生動物や多様性を増加させる(引用:角ほか 2009)。一方で、投入したシルトなど細粒土砂は河床間隙を充填するため、生活型分類による底生動物が変化する場合がある(引用:片野ほか 2009)ほか、土砂投入の量や方法によっては河床の一部に投入した土砂が過剰に堆積し、環境変化をきたす場合も考えられる(引用:坂本ほか 2010)。
 河床の撹乱・更新の助長による粒度組成の修復やこれによるの形成は、を産卵場や採餌場とする魚類の生息環境を提供する(引用:防学会 1999)ことになり、過去に生じたインパクトにより河床材料河道形状が変化した河川では、土砂投入により魚類の変化が期待できる。
 なお、土砂投入の量や方法によっては、河床の一部に投入した土砂が過剰に堆積し、環境変化をきたす場合も考えられる(引用:坂本ほか 2010)。


引用文献
1)角哲也    (2008) ダム堆河川還元材利用における簡易処理手法の開発と土砂還元模型実験,土木学会環境水理部会研究集会
2)山下洋太郎ほか(2006) 土砂還元による河床の再生 三春ダムでの取り組み,土木技術,第61巻(4),pp.60-66
3)池周一ほか (2009) ダム下流生態系,京都大学学術出版会
4)菊池英明ほか(2007) 長期排砂対策を考慮したダム下流土砂還元試験と影響調査に関する提案, 土木学会 河川技術論文集,第13巻,pp.69-74
5)櫻井寿之ほか(2008)三春ダム直下流における置土侵食の現地観測, 土木学会第63回年次学術講演会講演概要集第2部,pp.251-252
6)角哲也ほか  (2009) 下流河川への土砂還元の現状と課題, 河川技術論文集,第15巻,pp.459-464
7)坂本健太郎ほか(2010) 黒部川の砂州における樹林化の拡大状況とその要因について, 応用生態工学会,第14回研究発表会講演集,pp.187-188
8)皆川朋子ほか(2004) 土砂投入が付着藻類に及ぼす影響 -多摩川永田地区を事例に-,土木学会 河川技術論文集,第10巻,pp.477-482
9)池周一ほか (2009) ダム下流生態系,京都大学学術出版会
10)片野泉ほか  (2009) 土砂還元によって底生動物相は変化するか?,土木技術資料,51-4,pp.40
11)防学会 (1999) 水辺域ポイントブック -これからの管理と保全- 古今書院

物理環境のレスポンス

 以下に、フロールートにおける現象を解説した。

[[土砂|土砂]]投入?河床高低下の改善 河床高低下の改善?[[掃流力|掃流力]]の変化 [[土砂|土砂]]投入?粒度組成の変化 [[掃流力|掃流力]]の変化+粒度組成の変化?河床の[[撹乱|撹乱]]・更新の変化 河床の[[撹乱|撹乱]]・更新の変化?細粒材料の変化 河床の[[撹乱|撹乱]]・更新の変化?[[瀬|瀬]]の形成 河床の[[撹乱|撹乱]]・更新の変化?濁水濃度の一時的な変化



① 土砂投入 → 河床高低下の改善

 置土等により土砂を投入することで、主に出水時に発生する掃流力が置土を下流河道に掃流する。土砂の掃流は、発生する掃流力により異なり、小さな粒径ほど移動しやすい。
掃流力は、流水の勾配や水深の関数(引用:土木学会 1999)であり、以下の式で表される。

τ=ρU*2
U*2=gri

ここにτ:限界掃流力、ρ:水の密度、u*:摩擦速度、g:重力加速度、i:エネルギー勾配、r:径深(水深) である。岩垣によれば、掃流力(摩擦速度)と材料の動きやすさの関係として、以下を示している(引用:土木学会 1999)。

>0.3030 ≦ d       ; u*c2 =80.9d
>0.1180 ≦ d ≦ 0.3030 ;     =134.6d31/22
>0.0565 ≦ d ≦ 0.1180 ;     =55.0d
>0.0065 ≦ d ≦ 0.0565 ;     =8.41d11/32
>       d ≦ 0.0065 ;     =226d

 ここにd:移動限界粒径、u*c:移動限界摩擦速度 である。
 掃流された土砂の一部または全部は、掃流後の流量低減に伴う掃流力低下により河床に沈降する。これにより低下傾向にあった河床高は改善する。


引用文献
1)土木学会(1999) 水理公式集


② 河床高低下の改善 → 掃流力の変化
 掃流された土砂は、河床に一様に沈降せず主に掃流力が低い河床に堆積する。これにより、河床縦断形状が変化し土砂投入前の河床に比べ、流速が変化する。たとえば河床が上昇した地点の下流では、河床勾配が急峻となり流速が増加することになる。一方で河床が上昇した地点の上流では、河床勾配が緩やかとなり、流速が減少する。流速は以下の式で表される(引用:土木学会 1999)。
  v=1/n i1/2 r2/3
 ここにnはマニングの粗係数であり、自然流路では0.03~0.06の範囲となる。流速の式を掃流力の式に代入すると、掃流力は径深(水深)の関数となり、以下の式が成り立つ。
 τ=ρ(n2 g r4 v2)
  以上より、河床高低下の改善による径深(水深)の変化は、掃流力の変化をもたらす。


引用文献
1)土木学会(1999) 水理公式集


③ 土砂投入 → 粒度組成の変化
 置土の材料は、多くの事例では静水区域(湛水地またはダム貯水池、沈池等)に堆積した材料である。これらの材料は、投入する河川の特徴や投入土砂の採取地点における粒径に左右されるため、必ずしも同じような粒径とはいいにくい。三春ダムにおいて使用した投入土砂の粒径は、60%粒径が0.25mmであり、主にシルト)~中砂利)(0.125~50mm(引用:山下ほか 2006))であった。一方で多摩川の永田地区における土砂投入に使用した土砂の粒径は、永田地区における河床材料とほぼ同様であり、平均粒径35mm、90%粒径100mmとしている(引用:皆川ほか 2004)。両者を比べると、多摩川の置土材料が大きい。なお両者に共通しているのは、や細(0.062~4mm)(引用:国土交通省ほか 2009)の材料を含んでいることであり、これらの構成比が減少している区間の河道には、土砂投入により間の間隙に等が充填されやすく、場所によっては河床材料の粒度組成が修復され、多様な粒径の材料で構成される河床が形成される。


引用文献
1)山下洋太郎ほか(2006) 土砂還元による河床の再生 三春ダムでの取り組み,土木技術,第61巻(4),pp.60-66
2)皆川朋子ほか(2004) 土砂投入が付着藻類に及ぼす影響 -多摩川永田地区を事例に-,土木学会 河川技術論文集,第10巻,pp.477-482
3)国土交通省国土技術政策総合研究所・独立行政法人土木研究所(2009)ダムと下流河川の物理環境との関係についての捉え方


④ 掃流力の変化+粒度組成の変化 → 河床の撹乱・更新の変化
 や細の構成比が増加し河床高が上昇した箇所では、出水時において移動可能な材料が増える。またその上下流では、河床勾配の変化により河床に働く掃流力が変化することになり、特に掃流力が増加する箇所では、河床に堆積する移動可能な材料が巻き上がり、流下する土砂量が増える。このように、土砂投入により河床高や河床構成材料が変化し掃流力が増加した箇所では、や細土砂投入前に比べ活発に動くようになり、河床の撹乱・更新を助長する。
 なおIRとは違う現象として、河床の上昇により掃流力が低下した河床では、逆に河床から巻き上がる材料が減少し細粒材料が多く堆積する(引用:池ほか 2009)場合がある。しかし、細粒材料はその後の小出水によっても撹乱し巻き上がりやすいことから、河床は土砂投入前に比べ材料の交換が頻繁になる場合がある。


引用文献
1)池周一ほか(2009) ダム下流生態系,京都大学学術出版会


⑤ 河床の撹乱・更新の変化 → 細粒材料の変化
 移動しやすい材料が増え河床の撹乱・更新が助長されることで、や細のフラックスは増加し一部が堆積することにより、下流河川ではや細などの構成比が増加することになる。
 上流防施設やダム河川横断構造物(河道土砂の民間利用を含む河川整備)といった改変インパクトが存在する河川では、土砂供給量の減少により、河床低下やこれに伴う構造水際構造の変化、そして河床材料の粗粒化を引き起こす場合がある(引用:国土交通省ほか 2009)。河床材料の粗粒化は、頻繁に動きやすいや細が中小出水により流出する一方で、発生する掃流力に対して動きにくい粒径の大きなは残されるため、結果として粒径の大きな材料のみが残されることにより生じる(引用:池ほか 2009)。河床は浮の状態となりの間隙は大きなものとなる。土砂投入によりや細のフラックスが増加すると、出水後期に掃流力が減少することにより、場所によってはこれらの沈降が促進し、間隙に充填され細粒材料の構成比が増加する箇所が見られるようになる。この状態は、間隙への充填の程度により、載りやはまり(引用:竹門ほか 1995)といった状態に分類される。


引用文献
1)国土交通省国土技術政策総合研究所・独立行政法人土木研究所(2009)ダムと下流河川の物理環境との関係についての捉え方
2)池周一ほか(2009) ダム下流生態系,京都大学学術出版会
3)竹門康弘ほか(1995) 棲み場所の生態学,平凡社


⑥ 河床の撹乱・更新の変化 → の形成
河床の撹乱機会の助長(増加)は、河床材料の巻き上がりや堆積といった材料の交換を活発化させるとともに、河床高が短い縦断距離で頻繁に変化することで、河床勾配が短いリーチで変化する。これにより、流れが速く白波のたつや流れが遅いが形成されやすくなる。既にが形成されている箇所 では、頭付近に置土材料をはじめとした移動土砂堆積することで下流との河床勾配が大きくなり、さらにが大きくなりやすい(引用:角ほか 2009)。


引用文献

1)角哲也ほか  (2009)下流河川への土砂還元の現状と課題, 土木学会 河川技術論文集,第15巻,pp.459-464


⑦ 河床の撹乱・更新の変化 → 濁水濃度の一時的な変化
 置土によりのフラックスが増加した場合、出水時における流水中の浮遊土砂量が増えるため、濁水ピーク濃度のわずかな上昇や濁水継続時間の延長が生じる場合がある(引用:国土技術政策総合研究所資料)。置土する土砂の多くはや細(0.062~4mm)(引用:国土交通省ほか 2009)の材料の場合が多い(引用:山下ほか 2006、皆川ほか 2004)。このうち粒径の小さいや、場合によっては混入するシルトなどは、出水時のみならず平常時に発生する掃流力であっても浮遊状態でも流下する場合があり、流水中の濁水濃度を上昇させる。
 濁水濃度の上昇期間は、投入する土砂量が少ない場合一時的なものとなる。なお、投入する土砂量や細粒土砂の構成比によっては長期間にわたり河床に残存し、濁水濃度の高い状況を維持する場合も考えられる。このため、土砂量を調整したり掃流時の河川流量を人為的に増加させたりするなどの方法を採用している場合もある(引用:坂本ほか 2005)。


引用文献
1)国土交通省国土技術政策総合研究所・独立行政法人土木研究所(2009)ダムと下流河川の物理環境との関係についての捉え方
2)山下洋太郎ほか(2006) 土砂還元による河床の再生 三春ダムでの取り組み,土木技術,第61巻(4),pp.60-66
3)皆川朋子ほか(2004) 土砂投入が付着藻類に及ぼす影響 -多摩川永田地区を事例に-,土木学会 河川技術論文集,第10巻,pp.477-482
4)坂本博文ほか(2005) 河川土砂還元を組み合わせた真名川ダム弾力的管理試験「フラッシュ放流」,河川技術論文集,第11巻,pp273-278

生物環境のレスポンス

 以下に、フロールートにおける現象を生物ごとに解説した。

植物のレスポンス

河床の[[撹乱|撹乱]]・更新の変化?草本類の変化 細粒材料の変化?[[砂州|砂州]]の草原化・[[植生|植生]]の変化


① 河床の撹乱・更新の変化 → 草本類の変化
 河床が上昇した箇所では、砂州上を移動する材料のフラックス増加により河床の撹乱・更新が促進され、砂州に生長していた草本類が掃流される(引用:角ほか 2009)。移動する材料フラックスの粒径構成比は流量により異なるが、砂州を十分に冠水させる出水が発生した場合は、砂州を構成するを動かすとともに、間の間隙に充填された材料も流出しやすくなる。砂州に生長する草本類によっては、地下茎が比較的浅い範囲に広がっているため、撹乱により流出する場合がある。土砂投入によりや細のフラックスが増えた場合、これらが研磨効果をもたらす(引用:角ほか 2009)ため、掃流が促進され、草本類は一層減少する場合がある。
 下久保ダムにおける土砂投入後のモニタリング調査によれば、河道内におけるツルヨシなどの植生が掃流されるとともに砂州が形成されて、自然裸地の増加が確認されている(引用:角ほか 2009)。


引用文献
1)角哲也ほか  (2009)下流河川への土砂還元の現状と課題, 河川技術論文集,第15巻


② 細粒材料の変化 → 砂州の草原化・植生の変化
 シルトのフラックスが増加し、これが砂州上に堆積した場合、頻繁に冠水しない比高差の高い砂州では、細粒材料による保水性の向上や上流から流下する栄養塩類(リターなど)の捕捉などにより、植生が生長しやすい環境場が形成される(引用:坂本ほか 2010)。植生の成長は、草本類による草原化~樹林化といった植生遷移をもたらし、安定的な樹林帯を形成する場合がある。
 砂州の草原化・植生の生長の要因として、河床の保水性の向上と材料に付着する栄養塩類の増加が関係しているとする研究もある(引用:川嶋ほか 2010)。地下茎が比較的浅い範囲に広がる草本類は、の間隙が大きいことで地下茎から水分や栄養塩の吸収が困難となる。このため、浮状態の河原では草本類の生長は鈍い。しかし、土砂投入により間隙にや細が充填されることで、水分や栄養塩類の砂州上の保持が可能になり、草本類が生長可能な環境となると考えられている。


引用文献
1)坂本健太郎ほか(2010) 黒部川の砂州における樹林化の拡大状況とその要因について,応用生態工学会,第14回研究発表会講演集,pp.187-188
2)川嶋崇之ほか (2010) ダム排による砂州上の栄養塩動態と樹木分布の関係, 応用生態工学会 第14回札幌大会,研究発表



付着藻類のレスポンス

[[瀬|瀬]]の形成?[[付着藻類|付着藻類]]の変化 濁水濃度の一時的な変化?[[付着藻類|付着藻類]]の変化


① の形成 → 付着藻類の変化
 や小のフラックスが増加する場合、これらが河床の上に生長する付着藻類を研磨し剥離させるため、付着藻類の更新機会が増加し新鮮な藻類が維持できる(引用:皆川ほか 2004)。の形成などにより流速が増加した場合、研磨効果に加え、流れによる剥離作用が増加するため、の更新機会が増加する(引用:山本ほか 2003)。
 フラッシュ放流が実施される場合は、の研磨効果や流れによる剥離作用が生じる機会が増加するため、藻類は剥離更新が進む(引用:坂本ほか 2005)。


引用文献
1)皆川朋子ほか(2004)土砂投入が付着藻類に及ぼす影響 -多摩川永田地区を事例に-,土木学会 河川技術論文集,第10巻,pp.477-482
2)山本亮介ほか(2003)移動粒子を伴う流れの付着藻類剥離効果,土木学会 水工学論文集,第47巻,pp.1069-1074
3)坂本博文ほか(2005)河川土砂還元を組み合わせた真名川ダム弾力的管理試験「フラッシュ放流」,河川技術論文集,第11巻,pp273-278


② 濁水濃度の一時的な変化 → 付着藻類の変化
 シルトのフラックス(濁水濃度)が増加することで、洪水後期にはこれらが掃流しきれず河床に沈降し河床に堆積する。河川では、表層を構成する主なの間隙や表面にこれらの材料が堆積することになり、表面に付着した藻類シルトに覆われる。表面に付着した藻 類は、シルトに覆われることで日射制限を受けることになる。これにより光合成効率が低下した藻類は、生長阻害を受ける(引用:皆川ほか 2004)。


引用文献
1)皆川朋子ほか(2004) 土砂投入が付着藻類に及ぼす影響 -多摩川永田地区を事例に-,土木学会 河川技術論文集,第10巻,pp.477-482



底生動物のレスポンス

[[瀬|瀬]]の形成?[[底生動物|底生動物]][[種|種]]の変化 細粒材料の変化?[[底生動物|底生動物]]の[[種|種]]の変化


① の形成 → 底生動物の変化
 ダムやその他の要因により河道の材料が粗粒化した区間では、主にの表面や間隙を利用して生息する底生動物生活型分類で言うところの造網型など)が優先する傾向がある。や小のフラックスが増加し、これらが河床に堆積したり、構造にメリハリが生じたりすることで、粒径構成が多様な場(粒径の細かい場、粒径が粗いままの場、多様な粒径が分布する場など)が形成される。このため、場の形状に依存する底生動物生活型)も多様に分布し、も増加する。


参考文献
1)竹門康弘ほか(1995)棲み場所の生態学 平凡社


② 細粒材料の変化 → 底生動物の変化
 や小土砂投入により過剰に堆積する場所では、の間隙にこれらが充填されはまりの状態となる。このように、河床の状態が変化することで、そこを棲み場所として生活する底生動物相も変化する。
 複数ダムでの傾向を底生動物生活型で分類すると、ダム下流では造網型の底生動物の割合が大きくなっているほか、匍匐型や固着型の底生動物も見られる(引用:池ほか 2009)。一方で土砂投入後の河床では、これらの生活型の割合が減少し土砂の存在に依存する携巣型の底生動物(例えばヤマトビケラ)が優占するようになる(引用:片野ほか 2009)。この生活型の構成割合は、自然河川におけるものと類似すること(引用:片野ほか 2009)から、土砂投入の方法によっては底生動物相は自然の状態に近づいていると考えられる。


引用文献
1)池周一ほか(2009) ダム下流生態系,京都大学学術出版会
2)片野泉ほか (2009) 土砂還元によって底生動物相は変化するか?,土木技術資料,51-4,pp.40


参考文献
1)竹門康弘ほか(1995)棲み場所の生態学 平凡社



魚類のレスポンス


[[瀬|瀬]]の形成?[[魚類|魚類]][[種|種]]の変化


① の形成 → 魚類の変化
 ダムやその他の要因により河道の材料が粗粒化した区間では、主にに依存して採餌・産卵する魚類が生息しやすい環境(引用:財団法人リバーフロント整備センター 1996)となる。や細のフラックスが増加し、これらが河床に堆積したり構造にメリハリが生じることで、粒径構成が多様な場(粒径の細かい場、粒径が粗いままの場、多様な粒径が分布する場など)が形成される。ダム直下流河道など、河床材料の粗粒化が生じている河川では、アユなどの生物が減少している場合がある(引用:角ほか 2009)が、土砂投入により粒径構成が多様となることで、生息場の観点から魚類の好適環境が変化し魚類の変化が期待(引用:菊池ほか 2007)できる。


引用文献
1)財団法人リバーフロント整備センター(1996) 川の生物図典,山海堂
2)角哲也ほか (2009)下流河川への土砂還元の現状と課題,土木学会 河川技術論文集,第15巻,pp.459-464
3)菊池英明ほか(2007) 長期排砂対策を考慮したダム下流土砂還元試験と影響調査に関する提案, 土木学会 河川技術論文集,第13巻,pp.69-74

参考文献

・リバーフロント整備センター(1999)河川における樹木管理の手引き,山海堂
・リバーフロント整備センター(1994)河道内の樹木の伐採・植樹のためのガイドライン(案),山海堂

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